Pain of Salvation/Road Salt One(2010)

スウェーデンのグループPain of Salvationの2010年最新作。
何かに衝き動かされるのがロックであるならば彼らのその目論見は見事なまでに成功しているといわざるを得ない。気持ちを表現するのに奇を衒ったり極端にテクニカルになる必要などないのだと教えてくれる。
Daniel Gildenlowの感情が零れ落ちそうなくらいに情動的なヴォーカル、そして重厚でありながら繊細なメロディ。プログレ、メタル、カントリー、フォーク、エスニック、それだけでは足りない。ガレージで録音したかのようなジャムセッションのようなサウンド*1。ロックという感情に貫かれていながら様々な音像が横断的に複雑に絡み合ってぐちゃぐちゃになってそしてあらゆる感情がごちゃまぜになっていて、一度聴いてしまったら抜け出せない。


Rating: ★★★★★★★★★☆(9.4/10.0)



それにしてもDaniel Gildenlowはセクシー。Transatlanticのライヴでも思うのだけどアンプの上によく乗ってるし、アンプの上に乗るのがほんとよく似合うミュージシャンなのではないかと勝手に思っています。

*1:"Road Salt One" from Wikipedia in English http://en.wikipedia.org/wiki/Road_Salt_One

3月の5枚。

相変わらず混沌としています。

今月の5+1枚

Steve Reich/Music for 18 Musicians(same,1976)
 初ライヒ。計算されつくした反復、ミニマリズム。クラシカルな音の海。
 緻密にそしてコンパクトに構築された56分の音世界がそこにある。


Cornelius/FANTASMA(Japan,1997/2010)
 まるで遊園地のような音楽。目まぐるしくて煌びやか。
 エレクトロでファンキーでロックな渋谷系はここに現出している。


Frost*/The Philadelphia Experiment(UK,2010)
 スタジオ盤の勢いそのままに迫力のあるライヴ盤。活動休止はもったいない。
 スタジオ録音のDividing Lineも圧巻のドラマチックな作品。


Miles Davis/Bitches Brew Live(US,1969-1970/2011)
 ジャズからのロックアプローチのようにも思える。
 ジャズとロックが激しく交錯する。脂の乗った素晴らしい名演。


スカート/エス・オー・エス(Japan,2010)
 澤部渡23歳の一人ユニット。ファーストアルバム。
 尺の短い楽曲集だけど雰囲気には一貫したものがあって。空気感があって。季節感があって。


劇場版 マクロスF サヨナラノツバサ netabare album the end of "triangle"(Japan,2011)
 極上ポップアルバム。菅野よう子のエンターテインメント曲の質の高さに嫉妬する。
 ランカの可愛さと気持ちが伝わる楽曲が多い。ランカはちょっと…と思っていた方に是非。

次点の5枚

Popol Vuh/In den Garten Pharaos(German,1972)
 シンセがゆらゆらとたゆたうアンビエント作。そこには旋律もリズムもない。
 ジャケットの通りの蓮の花の咲くような天上の世界が拡がる。吸い込まれる。
VA/刀語 歌曲集 其ノ壱(Japan,2011)
 アニメの世界観に合ったごった煮ED集。
 妖精帝國のハイクオリティなナンバーに、ポップの域を超えた畑 亜貴の変拍子曲も妖しく光る。
栗林みな実/miracle fruit(Japan,2011)

今月の5-2曲

X-Legged Sally & the Smith Quartet(Bereft of a Blissful Union,1997)
 フリーキーで強烈なサックスを軸にビッグバンドジャズ、ファンク、ロック。
 あらゆるジャンルを縦横無尽に駆け回る。
 このアルバムはこの曲を聴くために存在していると言っても過言ではない。
フルカワミキ/金魚(Very,2010)
 スーパーカーのヴォーカルを務めていた彼女のフェティッシュな声。
 刻むビートに思わず体が動く。踊れ金魚。
Miles Davis/Directions(Bitches Brew Live,1969-1970/2011)
 ジャズよりもジャズ的。ロックよりもロック的。Third期のSoft Machineが好きなら是非。
 パワーがCDになっても溢れてくるという怖ろしい作品。

2月の5枚。

しっかり更新…。
ずっしりと質感のある作品ばかりです。どれもが凄い。

今月の5+4枚

金延幸子/み空(Japan,1972)
 優しい歌声。そしてどこかかなしげなフォーク。「おまえのほしいのは何」?
 シンプルなアコースティックサウンドがその先にある透き通る青空を思わせる。
Kestrel/same(UK,1975)
 ひねくれ英国ポップのマスターピース。ポップでプログレでハードロックでジャズロック
 メロトロンの洪水に、エレピがおしゃれさを添えるニクさ。
鈴木慶一とムーンライダース/火の玉ボーイ(Japan,1976)
 ジャムセッションのようで楽しくなるジャパニーズロックの金字塔。
 夕暮れから夜の東京下町の雰囲気をどことなく漂わせつつそろそろ歩くような。そんな音楽。
細野晴臣/泰安洋行(Japan,1976)
 トロピカルでエキゾチックでチャンプルー。力が抜ける。
 沖縄、アジア、カリブやらメインストリームから少し外れた音楽をことこと煮込んだ感じ。
岡林信康/岡林信康ろっくコンサート(Japan,1979)
 決して音質はよくないけれどのびのび演奏してる印象が伝わってくる。
 音楽にメッセージがのる。そんな稀有な時代だったのだろうか。
ザ・スターリン/虫(Japan,1982)
 初期衝動を音楽にするなら、そう、こんな感じかも。
 無意味という意味の追求か、はたまた何も考えていないのか。
Reinbert de Reewe/Satie: The Early Piano Works(1998)
 最もテンポの遅いSatie演奏の一つである作品集。
 おやすみ前に。静かな雨の日に。やさしい陽を浴びながら。
ゲルニカ/GUERNICA IN MEMORIA FUTURI(Japan,2002)
 80年代でありながらロックでもない。ポップでもない。はたまたテクノでもなく。
 戦前の歌謡曲を意識したようなアートワークと時代に迎合しない空気を纏った怪作群。
Sakanoshita norimasa/Meditation(Japan,2010)
 エレキギター1本。ギャラリーで演奏された音。静かに描かれる。
 午睡のような心地よさに瞑想へと引きずり込まれる。

次点の5+2枚

White Noise/An Electric Storm(UK,1969)
 サウンドコラージュの古典。喘ぎ声がエロい。中学生で聴いてたら人生少し変わってたかな。
 人力でサウンドコラージュを作るアナログ時代の途轍もない苦労は今では想像もつかない。
あがた森魚/乙女の儚夢(Japan,1972)
 暗く狭い畳の部屋で一人で聴きたい。70年代の匂いが立ちのぼってくるような感じ。
 儚さと切なさが入り雑じるこのやりきれなさはどこへ持って行けばいいのだろう。
紫/紫(Japan,1976)
 沖縄ハードロック。日本離れしてる。
 ハイテンションのこのサウンドでのデビューは相当に鮮烈だっただろう。
THE YELLOW MONKEY/GOLDEN YEARS SINGLES 1996-2001(Japan,2001)
 イエモンの後期ベスト盤。
 楽園、BURN、ラストシングル「プライマル。」まですべてが光る。
Takagi Masakatsu/COIEDA(Japan,2004)
 夜のキラキラした海をふらふらと彷徨う。漂う。
 David Sylvianを起用した"exit/delete"は圧巻。
no.9/Good morning(Japan,2007)
 爽やかな朝に打ち寄せるエレクトニカの波。Good morning.
 静かな夜に静かにひいていくアコースティックギターの波。Good night.
阿部芙蓉美/Birthday(Japan,2009)
 ハスキーなウィスパーヴォイスの魔力。包み込まれる。
 スローテンポのバラードがこれだけ似合う人もなかなか少ない。 

今月の5曲

お休みです。

大友良英 ONE DAY ENSEMBLES

大友良英 ONE DAY ENSEMBLES @本郷中央教会
2011/03/05(Sat.) 15:00〜17:30
出演: 大友良英テニスコーツ飴屋法水Sachiko M、秋山徹次、江藤直子、近藤達郎、高良久美子芳垣安洋


文京区とJTBのまち歩き企画の一環としての特殊企画。ONE DAY ENSEMBLESと称した一日限りのオーケストラ編成ライヴ。
会場は本郷中央教会。関東大震災で焼けるも1929年に再建されただけあって歴史の刻まれた雰囲気のある会場でした。
大友良英本人もスタッフとして列を仕切ったりもしていて親近感も。


第一部:2台のオルガンとピアノを使った20分のサウンドインスタレーション
静かに始まり、静かに終わっていく変化する音像。数十年前から使われているという2台のリードオルガンを使いつつ、時にピアノを弾かずに操る大友さん。リードオルガンのペダルをキィキィといわせる音も音楽として取り込みながら緩やかに変化する序章でした。


第二部:オーケストラ編成でのインスタレーション。70〜80分は演奏してたのかな。
気付いたら始まっていた。それはもう360°から襲い来る音の洪水。スピーカーはアンプの音を出すための機械に過ぎなくて、ステージは会場全体。決してオーバーな表現ではなく、会場から出る音、会場から出せる音ならば、全てががこのライブに必要な音なのかもしれなかった。すべてが楽器。すべての音が音楽。どこからどんな音が来るのか。予測が付かない。頭の上からも音が降る。「おーいお茶」のペットボトルのビニールを剥がして、潰す。会場を歩き回ってアコースティックギターを爪弾いてはギターを振り回して、音を振りまく。はだしで歩きつつさえずるように歌う。くつではだしでくつしたで。大友さんが現れて目の前でギターを弾いていたと思ったら2階の席からアンプからの音を操ってみたり、楽譜の紙で扇いでみたり。舞台上のグランドピアノを弾く演者はくるくると変わっていく。担当楽器さえも簡単に変わる。バケツの上に置いたシンバル。バケツを叩く音。ガムランのリズムも歩き回る。2階から吊るしたギターが階段を降りる。床を引きずられる。旋律も拍も無い音が時に、気まぐれにメランコリックなメロディーへと昇華しては、再度砕けて思い思いの音に戻っていく。すべては「その場でしか出せない音」。その場限りの演奏とその場限りの音が離れては近づいてを繰り返す音の波打ち際。オーケストラ編成の多人数だからこそできる唯一の演奏。そしてクライマックスには礼拝堂全体の音が集まってきて、ものすごい規模のオーケストラになっていた。なんというか「気持ちのいい不意打ち」とでも名付ければいいのかな。そんな流れがあって気持ちよくて体をそのまま音にあずけていたかった。
いつの間にか始まっていつの間にか終わりを告げた第二部は大友さんが戸惑いながら「あ、終わりです」と言う言葉と観客の笑い声で終わり。


今まで行ったライブの中でも音の勢いと圧倒感は群を抜いていたことは間違いない。教会という特殊な場。よく考えてみると1階に幼稚園がありながら、2階では大人たちが不協和音だとか、歩き回ってギター引きずってたリとかそんなことが行われていたのかと思うと本当に妙な感慨深ささえ覚えます。
その場限りの刹那の音の素晴らしさを体験できたライヴでした。


1月の5枚。

音源を大量に頂いて突如70年代ジャパニーズロック・フォークを聴き始めた。しばらくこの流れかもしれない。
浴びるように聴いているけれど、聴きなれていなかった音楽だけにまだまだ戸惑いながら消化を試みているところです。


今月の5+4枚

岡林信康/見る前に跳べ 岡林信康アルバム第二集(Japan,1970)
 フォークとロックの両立。今ではこんな歌詞を歌にのせる歌手はメジャーシーンにはいないけれど、そんなことはどうでもいい。歌が「力」を持っている。
Vashti Bunyan/Just Another Diamond Day(UK,1970)
 細いヴォーカルがシンプルなアコースティックな音にのる。哀しくて懐かしい。
遠藤賢司/満足できるかな(Japan,1971)
 肩の力の抜けた落ち着いた2ndアルバム。Tr2「カレーライス」はカレーライスと「僕」の歌というテーマであるだけなのにこんなにも哀しいメロディにのるだけで叙情性が恐いくらいに増す。
細野晴臣/HOSONO HOUSE(Japan,1973)
 不健康そうな青白い顔の細野晴臣のジャケットとは裏腹に陽だまりのように暖かい。ロックでありながらほのぼの。だがしかし卓越したテクニックと音作り。
はちみつぱい/センチメンタル通り(Japan,1973)
 この作品を聴いていると下町のゴミゴミとした裏路地に行きたくなる。音楽の中に70年代の懐かしさのようなものが詰まっているようでまるでタイムカプセルのようなアルバム。
鈴木茂/BAND WAGON(Japan,1975)
 はっぴいえんどの音や歌詞の世界観をそのまま引きずったような松本隆の詞に、さわやかにギターが鳴り響く。鈴木茂のヴォーカルも小気味よくてとても23歳のデビューアルバムとは思えない。
センチメンタル・シティ・ロマンス/same(Japan,1975)
 セルフタイトルの1st。都会なのにどこか田舎。これだけのほほんとしているのに決して気が弛んでるわけではない演奏力。新しさと懐かしさとアーバンとカントリーのクロスオーバー。
ZABADAK/SIGNAL(Japan,2002)
 ロックかと思うとポップでもあり、民族色もあり、バラードもあり。ジャンルを越境している。ロックチューンのM2:Play your daysでガツンとやられたと思ったが、それはこの作品の始まりに過ぎなかった。
特撮/オムライザー(Japan,2003)
 1stや2ndほどのキレはないもののオーケンやっぱり猟奇的に冴えてる。プログレエディとかもうド直球すぎて。

次点の5枚

Miles Davis/On the Corner(US,1972)
 Bitches Brewの3年後にMilesがファンクでジャズにアプローチするなんて誰が考えただろう。
矢野顕子/JAPANESE GIRL(Japan,1976)
 こんなにポップと民謡とがごった煮になった楽曲を歌っていたのかこの人は。怖ろしく迫力のある1st。
Herbie Hancock/Future Shock(US,1983)
 大胆にヒップホップとの融合を図った異色作。ジャズの空気を纏いながらスクラッチ音が入る「近未来的」な音。衝撃的。当時はきっと賛否両論だったんだろうな。
難波弘之/ブルジョワジーの秘かな愉しみ(Japan,1985)
 オリジナル曲とプログレ系のカバー曲が交錯する。UKのカバーもさることながら全体的なアレンジも、UK以降のJohn Wettonのポップ路線をどことなく追うような印象を受ける。作品としてのまとまりという点では少し散漫。
Jeff Beck/Live and Exclusive from the Grammy Museum(UK,2010)

今月の5曲

細野晴臣/ろっか・ばい・まい・べいびい(Hosono House,1973)
鈴木茂/砂の女(BAND WAGON,1975)
Herbie Hancock/Rockit(Future Shock,1983)
ZABADAK/Play your days(SIGNAL,2002)
特撮/オム・ライズ(オムライザー,2003)

12月の5枚。

実は数は聴いてました。12月。
その分しっかり聴きこめてない…

今月の5+8枚

Horace Silver/Blowin' the Blues Away(US,1959)
Hank Mobley/Soul Station(US,1960)
Mellow Candle/Swadding Songs(UK,1972)
Gong/You(UK,1974)
大瀧詠一/A LONG VACATION(Japan,1981)
Takagi Masakatsu/ Private/Public(Japan,2007)
Diablo Swing Orchestra/Sing-Along Songs for the Damned & Delirious(Sweden,2009)
Fang Island/Fang Island(US,2010)
Agents of Mercy/Dramarama(Sweden,2010)
Eddie Jobson's U-Z project/Ultimate Zero Tour - Live(UK,2010)
YUKI/"The Present" 2010.6.14,15 Bunkamura Orchard Hall(Japan,2010)
Syd Barrett/An Introduction to Syd Barrett(UK,2010)


モダンジャズを少しずつ。そしてフォークにサイケ、80年代日本の景気がよくて気持ちいいポップに、心洗われるエレクトロニカだけどアコースティックなライブ、吹奏楽メタルにアリーナロック、はたまたシンフォにプログレリバイバル、良質スロウポップにネジの外れたサイケポップ。
頭の中がいよいよたいへんなことになっています。
これだけの言葉で片付けるのは滅茶苦茶乱暴なのはわかってるのですよ…

次点の5+3枚

Bill Evans/Sunday at the Village Vanguard(US,1961)
Bill Bruford/Feels Good to Me(UK,1977)
Univers Zero/Heresie(Bergium,1978/2010)
SPK/Leichenschrei(Australia,1982)
David Gilmour/About Face(UK,1984)
I am Robot and Proud/Uphill City(US,2008)
特撮/初めての特撮 BEST vol.1(Japan,2010)
Soft Machine Legacy/Live Adventures(UK,2010)


Bill Evansはやっぱり1960年代前半が脂がのっててほんと聴き応えある。Bill Brufordの1stは久々に聴いて良さを再確認。Allan Holdsworthのギターがうねうねしまくってる。Univers ZeroのHeresieは黒々とした何かが渦巻いてるチェンバーロック。ホラーの一歩手前です。

今月の5+1曲

Gong/Master Builder(You,1974)
大瀧詠一/君は天然色(A LONG VACATION,1981)
特撮/パティー・サワディー(初めての特撮 BEST vol.1,2002)
Takagi Masakatsu/Any(Air's Note,2006)
Syd Barrett/Octopus[2010 Mix](An Introduction to Syd Barrett,2010)
Lily Chou-Chou/エーテル(エーテル-Single,2010)


Gongの異様な混沌とスペイシーな音が底なし沼。2011年はGongもしっかり聴きたい。
君は天然色シティ・ポップというかスタイリッシュな夏休み感がすごい。怖ろしいほどに洗練されている。鼻に抜けるあの不思議な大瀧詠一のヴォーカルが病みつきになる。Syd Barrettの今回のリマスターのOctopusは今までの音源よりも格段にクリアになっていてアコースティックでいい。これを聴くだけでも買う価値はあるんじゃないかな。一応Lily Chou-Chouも選んだけどもうリリイではなくてSalyuとして歌ってると思う。そういう意味でもの足りない。

11月の5枚。

70〜80年代ジャパニーズ・ポップ、ロックへと傾いていきそうな予感。


今月の5+1枚

大滝詠一/GO! GO! NIAGARA[30th Anniversary Edition](Japan,1976/2006)
David Gilmour/David Gilmour(UK,1978)
Transatlantic/Whirld Tour 2010: Live in London(Sweden/UK/US,2010)
放課後ティータイム/放課後ティータイムII(Japan,2010)
幼蚕文庫/メメント・モリ(Japan,2010)
ゆらゆら帝国/YURA YURA TEIKOKU LIVE 2005-2009(Japan,2010)


大瀧詠一/GO! GO! NIAGARAラジオDJ風のコンセプトアルバム。曲につながりがあるのではなくラジオ番組風にジングルでつながれた一連の作品群。ガツンとくる曲があるというわけではないのだけれどゆるやかにまとまりがあるポップ。売れ線のメロディとまでは決していかない開き直りはM2「趣味趣味音楽」に表れている。
David Gilmourのソロデビュー作品はPink Floydと大きくは乖離しないサウンドでありながら多少ポジティブな音。小品集ではあるが浮遊感のあるスペイシーなギターサウンドは麻薬的ですらある。


Transatlanticは文句ないでしょう。3CD2DVDのとんでもないヴォリューム。80分の作品"The Whirlwind"をこれだけエンターテインメントとしてもロックとしても美味しく料理できるのも彼らこそ。DVDもDaniel Gildenlowを加えての演奏が見られるなど大変充実したライヴ作。
放課後ティータイムII。disc2のカセットに録音したテイクの空気感がいい。初回限定版のカセットもうまいなあと。久々にラジカセでカセット聴いた。カセットの時代じゃなくなってしまったのだなとぼんやり思いながら聴かせてもらった。


幼蚕文庫/メメント・モリについてはまたゆっくりと書きたいので今回は軽く。死をテーマにした4曲。今回も浮森かや子嬢の歌唱が今回も光る。
ゆらゆら帝国の2005〜2009年のライブを集めたアルバム。2CD1DVD。『Sweet Spot』『空洞です』期のライヴというのもあり、ライヴにおいても『空洞です』のような「頑張らない」演奏(というと語弊があるかもしれないけれど)をやろうとしている印象を受けるがやはりライヴの熱が伝わってくる。『空洞です』より先へのステップへと進もうとしていたように思えるのは大幅にアレンジの変わった「グレープフルーツちょうだい」を聴いてもわかるのかもしれない。「単なる穴」「お前の田んぼが好き」も「『空洞です』以降」を模索しているような作品ではあるけれど『空洞です』の延長のような楽曲。バンドがある到達点に行き着いてしまったことはこういうところからも伺えるのかもしれない。それにしても円熟したバンドの演奏が聴ける最高の作品。

次点の5-3枚

クラムボン/ドラマチック(Japan,2001)
スピッツ/とげまる(Japan,2010)
葉月ゆら/サロン・ド・シャノワール(Japan,2010)


葉月ゆら/サロン・ド・シャノワール昭和歌謡風ポップアルバム。妖しい夜に引きずり込まれていく。

今月の5曲

荒井由実/中央フリーウェイ(1976)
放課後ティータイム/五月雨20ラブ(放課後ティータイムII,2010)
Oratorio The World God Only Knows/God only knows〜集積回路の夢旅人(Japan,2010)
豊崎愛生/Dill(Dill,2010)
ゆらゆら帝国/お前の田んぼが好き(YURA YURA TEIKOKU LIVE 2005-2009,2010)


ユーミンも聴いていかなくてはということでまずは手近なベスト盤より。
五月雨20ラブはベースのラインが最高な一曲。メロディもキャッチーな上に歌詞が心にチクリと刺さる。
豊崎愛生/Dillはクラムボンを迎えてのソロ第3弾。クラムボンに引っ張られたヴォーカルのようでもあるけれどクラムボンにマッチしたヴォーカルになっているという見方もできるかもしれない。決して上手いわけではないけれどクラムボンのキラキラとしたメロディに豊崎愛生のヴォーカルがよく合う。