大友良英 ONE DAY ENSEMBLES

大友良英 ONE DAY ENSEMBLES @本郷中央教会
2011/03/05(Sat.) 15:00〜17:30
出演: 大友良英テニスコーツ飴屋法水Sachiko M、秋山徹次、江藤直子、近藤達郎、高良久美子芳垣安洋


文京区とJTBのまち歩き企画の一環としての特殊企画。ONE DAY ENSEMBLESと称した一日限りのオーケストラ編成ライヴ。
会場は本郷中央教会。関東大震災で焼けるも1929年に再建されただけあって歴史の刻まれた雰囲気のある会場でした。
大友良英本人もスタッフとして列を仕切ったりもしていて親近感も。


第一部:2台のオルガンとピアノを使った20分のサウンドインスタレーション
静かに始まり、静かに終わっていく変化する音像。数十年前から使われているという2台のリードオルガンを使いつつ、時にピアノを弾かずに操る大友さん。リードオルガンのペダルをキィキィといわせる音も音楽として取り込みながら緩やかに変化する序章でした。


第二部:オーケストラ編成でのインスタレーション。70〜80分は演奏してたのかな。
気付いたら始まっていた。それはもう360°から襲い来る音の洪水。スピーカーはアンプの音を出すための機械に過ぎなくて、ステージは会場全体。決してオーバーな表現ではなく、会場から出る音、会場から出せる音ならば、全てががこのライブに必要な音なのかもしれなかった。すべてが楽器。すべての音が音楽。どこからどんな音が来るのか。予測が付かない。頭の上からも音が降る。「おーいお茶」のペットボトルのビニールを剥がして、潰す。会場を歩き回ってアコースティックギターを爪弾いてはギターを振り回して、音を振りまく。はだしで歩きつつさえずるように歌う。くつではだしでくつしたで。大友さんが現れて目の前でギターを弾いていたと思ったら2階の席からアンプからの音を操ってみたり、楽譜の紙で扇いでみたり。舞台上のグランドピアノを弾く演者はくるくると変わっていく。担当楽器さえも簡単に変わる。バケツの上に置いたシンバル。バケツを叩く音。ガムランのリズムも歩き回る。2階から吊るしたギターが階段を降りる。床を引きずられる。旋律も拍も無い音が時に、気まぐれにメランコリックなメロディーへと昇華しては、再度砕けて思い思いの音に戻っていく。すべては「その場でしか出せない音」。その場限りの演奏とその場限りの音が離れては近づいてを繰り返す音の波打ち際。オーケストラ編成の多人数だからこそできる唯一の演奏。そしてクライマックスには礼拝堂全体の音が集まってきて、ものすごい規模のオーケストラになっていた。なんというか「気持ちのいい不意打ち」とでも名付ければいいのかな。そんな流れがあって気持ちよくて体をそのまま音にあずけていたかった。
いつの間にか始まっていつの間にか終わりを告げた第二部は大友さんが戸惑いながら「あ、終わりです」と言う言葉と観客の笑い声で終わり。


今まで行ったライブの中でも音の勢いと圧倒感は群を抜いていたことは間違いない。教会という特殊な場。よく考えてみると1階に幼稚園がありながら、2階では大人たちが不協和音だとか、歩き回ってギター引きずってたリとかそんなことが行われていたのかと思うと本当に妙な感慨深ささえ覚えます。
その場限りの刹那の音の素晴らしさを体験できたライヴでした。