The World God Only Knows - 神のみぞ知るセカイOP

アニソンという括りに留めておくのはどう考えても勿体ないぞ、これ…。
アニメのOPも凝った曲構成だなと思っていたけど、シングルとしてリリースされたこの曲は想像以上だったので思わずレビュー。



Oratorio The World God Only Knows/God only knows〜集積回路の夢旅人(Japan,2010)


M1:God only knows。8分。全6幕からなる組曲形式。vocalはELISA
時にシンフォニックに。時にオペラに。そしてドラマティックに。アニソンであり、シングル作でありながら非常に意欲的なシンフォニック・ロック作といえるだろう。


エレクトリックなエフェクトがかかった囁きからELISAが登場、オーケストレーションとコーラスと共に緩やかに進む第一幕。ピアノがスピードを上げて一気に長調になる第二幕。そしてアニメOPとして使われる第三幕へ。前半はアニソン然としたスピード感のある曲調だが、後半は一転してチェンバロが曲を引っ張り、オーケストラへと雪崩れ込む。ピアノと共にビート感が増していく第四幕。ELISAの伸びやかなヴォーカルとシンフォニックな曲調が荘厳なメロディを作り出す。既にアニソンではなくもう、シンフォニック・ロックへと変容している。アリアのような歌声に続き、クサい泣きのギターが絡み合う第五幕を経て、ギターが咽び泣く終幕Repriseへ。そして唐突に曲は切れM2へと続いていく。
M2:集積回路の夢旅人。2分。そのままM1はM2へと繋がる。M1の余韻を残したまま子供のコーラスを中心に主人公桂木桂馬役の下野紘ELISAも歌うポップソング。最後は『神のみぞ知るセカイ』という作品のテーマであるゲームらしく、ファミコンのような8bit音で幕を下ろす。


M1の歌詞は全編英詞であり、これが曲調と合っている。"euphoric field","ebullient future"以来の英詞曲を歌うELISAの起用もこれ以上ない組合せ。曲調がカラフルなのも1人の作曲ではなく5人*1による作曲であるところによるだろう。歌詞は英語であるものの主題はあくまでも二次元であり、「神のみぞ知るセカイ」という作品らしさを際立てているし、さながら主人公のゲーマー趣味とも相まって二次元賛歌とも言えるところがまたニクい。


「三次元の奥行きで表現された壮大なる音楽的二次元セカイ」という帯の言葉を見て、初め「なんだオーバーなこと言うなあ…」と思っていたが、聴けばわかる気がした。コミックを読んでいてもこれ以上にオタク的な作品は少年誌上ではあまりないだろうと思っていたが、アニメ化しても、いい意味で裏切ってくれる作品となっている。
かつてこんなに壮大なアニソンがあっただろうか。いや、既にシンフォニック・ロックですよこれは。


Rating: 97/100



*1:作曲; M.C.E.(第一幕),前口渉(編曲,第二・三・終幕),木村香真良(第三幕),柳田しゆ(第四幕),mixakissa,すみだしんや(第五幕)