さよならポニーテール/モミュの木の向こう側(2011)

「さりげなくかつ鮮やかに 魔法をきみはかけるんだ」 (Tr.3 世界と魔法と彼の気まぐれ)

みぃな:基本は、みんなで試行錯誤しながら作ってるんで著名な人はひとりもいないし、今はほんとに自主制作みたいな感じですね。曲をマイスペースにUPするまでは、こんなに沢山の人が聴いてくれるなんて全然思ってなかったし。
ゆりたん:うん、他のメンバーも含めて、みんな個々で音楽やってるけど著名な人ではないですよ。設定がイラストなのは、その方が曲のコンセプトや世界観が伝わりやすいっていうだけで。
クロネコ:あと、チームっていうかサークルみたいな感じだから、普通のアーティストとかバンドの方法論にとらわれる必要もないのかなっていうのもあって。音楽を伝える為の方法論自体が新しい、っていうのを目指してるからニャ〜。

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この手の情報の比較的少ないミュージシャンに言えることかもしれないけれど、情報が少ないことにより生まれる「謎」を明らかにすることは必ずしも必要とは言えない。「謎」が明らかになったところで音に純粋な変化はもたらされない。「謎」を前にしたらそれを知りたい好奇心を持つのが人間かもしれないけれど、わからないことがあるというのはそれだけ多くの可能性があるということでもある。音楽や音源を目の前にして、音が聴こえてきたならばまずはそれで充分なのかもしれない。だからといって、どんな人たちが、どんな女の子たちがやっているのだろうかと思わないこともないわけではない。正直言うと気になるが、情報を明かさないことで纏える空気がこのミュージシャンを形作っているともいえるだろう。だったら知らないままでもいい。想像の世界で聴けばいい。


どこかにありそうなメロディ、曲調、ヴォーカル。
演奏が巧いわけでも、手数が多いわけでも、ヴォーカルがめちゃくちゃ魅力的なんてこともない。
どこかで聴いたことがありそうなのに聴いたことがないようで、嫌味がないし、気取りも気負いも感じられない。
目新しさがないと言ってもいいくらいなのに、聴くといつのまにか深みに嵌まっている。
なのに深みに嵌まったことにすら気づかずにいる。
そんな音楽。"空気"のような、息を吸うように自然に体に入り込む音楽。
全然すごくない。それがすごい。そんな音楽。
気付いたときには魔法にかかっている。そのときにはもう遅い。


Rating: ★★★★☆


*1:謎に包まれた女の子3人組「さよならポニーテール」について -インタビュー:CINRA.NET
http://www.cinra.net/interview/2010/11/26/000000.php